平成26年度「学校図書館の現状に関する調査」を読んでみた

昨日6月2日、平成26年度の「学校図書館の現状に関する調査」の結果が公表されました。

平成26年度「学校図書館の現状に関する調査」の結果について:文部科学省

(結果のPDFはこちら60ページ以上あるためダウンロード注意

 

今までもこのような調査が行われていることは知っていましたが、いざ学校図書館に勤務してみるとその意味合いは変わってきます。現職の学校司書なんだからこれくらいきちんと目を通しておかないと。

 

分厚いですが、そのほとんどは付録(全国全市町村の公立小学校・中学校がどれくらい学校図書館図書標準を満たしているかのデータ)となっています。

 

文科省の上記ページの「2.調査結果の概要」によると、

(1) 「学校司書」を配置している学校の割合は,小・中学校ではそれぞれ54.3%,53.0%であり前回より増加,高等学校では64.5%であり前回より若干減少している。
(2) 学校図書館図書標準を達成している学校の割合は小・中学校でそれぞれ60.2%,52.3%であり増加している。
(3) 学校図書館に新聞を配備している学校の割合は,小・中学校でそれぞれ36.7%,31.7%であり前回より増加している。
(4) 読書活動の状況については,小・中学校,高等学校でそれぞれ96.7%,88.3%,42.9%であり前回より増加している。

とのことでした。私自身読んでみて注目した部分はだいたいこんな感じです。好ましいことに、学校司書の法制化など近年は子どもの読書環境の質的・量的な向上に資するであろう追い風が吹き続いています。いい方向に向かっているのだろうなと期待はもてるのですが、今回の結果を見てみるとやはりまだまだだなと思わざるを得ません。

他に気になったのが以下の2点。

  • 公立高等学校の学校司書配置割合の減少。
  • 蔵書をデータベース化している学校の割合が小学校・中学校で70%前後、高等学校でも90.1%

学校司書の配置が進んでいるのはいいことですが、小中と比しても配置の進んでいた高等学校は頭打ちになっている印象を受けます。すでに高い数値なので無理に改善を進める必要はないのかもしれませんが、近年の学校統合が教員・学校司書の人員やりくりを難しくしているのでは?と考えると素直に喜べません。

そして蔵書のデータベース化。小中は7割前後と意外に高い印象を受けます。一方高等学校は9割。小中と比較すると20ポイントも高いですが、それでもまだ1割はデータベース化されていないということに驚きました。利用者のプライバシーを守るという図書館の任務は、いかなる設置主体・館種でも共有されていると言えるでしょうが、図書館における貸し出しとプライバシーの切っても切れない関係の議論も、現在ではコンピュータ式貸出方法を大前提にして進められている現状があるように思います。コンピュータ式のデータ管理を無批判によいことであると言うつもりはありませんが、それでもやはり学校図書館のこのような現状が「ひどい」の一言で片づけられてしまっている印象は拭えません。もちろんまず最初に「人」がいて、という条件付きであり、ここで自分が言うほど簡単にはいかない社会の課題であることは充分読み取れるわけですが……。溜め息。

 

関係:文部科学省、2014年度の「学校図書館の現状に関する調査」について、結果を発表 | カレントアウェアネス・ポータル