瀧羽麻子『花嫁の花』(『オキシペタルムの庭』)

 

花嫁の花 (朝日文庫)

花嫁の花 (朝日文庫)

 

 (『オキシペタルムの庭』の改題)

 

生徒に薦める恋愛小説としてはちょっと違うかもしれませんが、とてもおもしろかったです。30代女性の主人公・莢子(さやこ)の揺れる心。「結婚」をキーワードに、脆弱で移り気な人の「心」とその「幸せ」が描かれていきます。淡々と紡がれる莢子の日々と感情を読みながら、人の「好き」の気持ちがいかに危ういバランスで成り立っているかを実感します。例えば自分に好きな人がいて、両想いで、結婚も間近と考えてもいて、一瞬先には想いが通じて幸せな明日を2人で語り合っているかもしれない。でも一方で、一瞬先には2人で積み上げてきた過去が一気に瓦解して、二度と会うことのない元恋人とまったく別の方向に歩き出しているかもしれません。ああそうか、恋愛小説ってそんな何でもないありふれた奇跡を言葉にする文学なんだ。

 

いきなり語り出してすみません(笑)この本とても好きです。