もし学校図書館司書の資格が存在し、その採用試験があったらpart4

問4.次のうち、『学校図書館の手引』の説明として妥当なものを1つ選べ。

 

1.1953年に文部科学省から出版され、全国の学校図書館に配られた。占領期から執筆が進められていたこともあり、アメリカの学校図書館に関する図書などの影響を色濃く受けている。

 

2.1970年に日本図書館協会から出版された。執筆に関わったのは同会の学校図書館グループで、学校図書館の重点目標として、貸出し・レファレンスサービス・授業利用が挙げられている。

 

3.前川恒雄がイギリスの学校図書館活動を参考に著した「これからの日本の学校図書館の在り方」の提言書。第四章で紹介された「貸出五条件」は、その後学校図書館問題研究会が引き継ぎ全国大会で議論を行ったことで有名である。

 

4.有山崧(たかし:山冠に松)らが編集委員として執筆・編集に関わった1948年刊行の学校図書館手引書。内容は学校図書館の意義から図書の受け入れ・払い出し・分類、図書委員活動や学級文庫の運営など多岐にわたる。

 

5.1963年に全国学図書館協議会から出版された学校図書館従事者の入門書。編集委員たちの3年にわたる全国の小中学校図書館調査が元となっており、入門書でありながら解説に統計データが豊富に盛り込まれている。

 

 

 

プライベートの理由で多忙を極めたこの数日。久しぶりの更新となってしまいました。今回は伝説の書籍『学校図書館の手引』について。この問題を作るためにわざわざ県立図書館まで行って借りてきたのに、気づけばすでにパブリックドメインではありませんか。そんなに長い内容ではないし、NDLのデジタルコレクションで読めばよかった。

さて、今回はある程度図書館について勉強している人でなければ難しい問題、かもしれません。私の作った拙い選択肢でわかるものはわかってしまうかもしれませんが。

 

 

 

解説

1.誤り。1953年にはそもそも文部科学省がありません。ひっかけ問題。

 

2.誤り。1970年と言えば『市民の図書館』。この本での公共図書館の重点目標は貸出しの徹底、児童サービス、全域利用ですね。

 

3.誤り。後半の貸出五条件は学図研オリジナルのもののはず。そして前川さんの『われらの図書館』は有名ですが、日本の学校図書館の提言といった内容ではないです。

 

4.正しい。さすがに現物を読んでいないと解けないため、そうでない人は消去法で解くしかないでしょうか。ちなみに日本図書館協会版は1950年刊。

 

5.誤り。1963年と言えば『中小都市における公共図書館の運営』。もし本当に小中学校の図書館を調査したものがあったなら「小中レポート」になってたかも(笑)

 

 

占領下日本の学校図書館改革―アメリカの学校図書館の受容

占領下日本の学校図書館改革―アメリカの学校図書館の受容

 

 以前読んだ中村百合子さんのこちらの著作がかなり良かったため、その影響を受けて「手引」の問題を作成しました*1。この問題の作成にあたりもう一度ILLで取り寄せようと思ったものの、残念ながら時間がありませんでした。高価な本ですが、そろそろ購入も検討すべきでしょうか。『学校図書館の手引』それ自体も含め、ぜひチェックしてみてください。

*1:択1はまさしくこの本の内容を参考にして作っています。オープンアクセスで読むこともできる中村さんの『『学校図書館の手引』編集における日米関係者の協働』(2004)、『『学校図書館の手引』にみる戦後初期の学校図書館論の形成』(2005)(※どちらも『日本図書館情報学会誌』)も含めとてもいい内容です。