荻上チキSession・22「2015年09月15日(火)「豪雨災害、取材報告」(取材報告モード)」Podcast

TBSラジオをキーステーションに放送されている荻上チキSession22。有名な番組なので知っている人も多いと思います。私もよく聞いており、今回パーソナリティの荻上さんが豪雨被災地を訪ねたと知り、さっそくチェックしてみました。

 

www.tbsradio.jp

※メインセッションの放送時間は毎回1時間前後でPodcast保存は1週間です。

 

1時間超のPodcast。一応図書館系ブログであること、あまりにも長くなり過ぎること、から図書館に関する部分だけ紹介しますが、避難生活、行政に対する市民の不満など、もし聴くなら必ず全部聴いて戴きたいとてもいい内容です。Podcastは来週の火曜日くらいまでダウンロードできます。なお、聴く前にこちらのツイートまとめを見ておくのをオススメします。↓ 

togetter.com

 

以下、あくまで内容に沿って聴いたこと・感想を書くものであり、放送内容の文字起こしではありません。また内容は放送時点のものであり、以下の文責は当ブログ管理者にあります。

 

荻上チキ氏による茨城県常総市の取材13日(日)~14日(月)

豪雨被害の大きかった茨城県常総(じょうそう)市。避難を強いられてたり、停電している世帯や家がかなりの数あります。断水も広範囲で広がっており、お風呂や洗濯ができず、泥が洗い流せない状態が続いています。

 

 

常総市立図書館が気になった

荻上さんが常総市立図書館を訪れたのは13日昼過ぎ。図書館外観はさほど被害がひどいようには見えなかったものの、中が気になったそうです。この周辺は荻上氏の股下くらいまで浸水した地域で、図書館の中も本棚下2段ほどが水に浸かり、図書館の中が濡れて本が散乱していたそうとのこと。当然立ち入ることはできません。換気のためか窓が開いていて、覗いてみると館内がものすごく生臭い状態。まだまだ断水中で、泥のかき出しはできても何かを洗ったりはできません。濡れた本が大量で1冊1冊に対応もできていない中、図書館の前に手書きの掲示物あり。「当面の間休館します(と言った旨)」

 

 

市立図書館の館長に聞く

館内は水浸しで大きな被害を受けています。

館長タカヤマキョウコさんに話を聞かれたとのこと。

「今は水がひいたが、本が水に浸かってしまった。水に膨れた本が書架をゆがませた。水が溜まってしまったためにソファやブックトラック*1が水で動いてぶつかっていろんな物や本を落としてダメージを与えてしまったようだ。私たちは教育委員会の人間なので、石下(いしげ)に集合するように言われていた。石毛の被害が大きかったためそちらの対応に追われてしまった。図書館が心配で様子を見に行きたかったが、行こうと思ったらすでに道がなくなってしまっていた。陸の孤島と化していた。昨日(13日)の昼ごろようやくたどり着いた。しかし結局心配していた通りの結果になってしまった。早くにわかっていれば二階に(本を)避難させるなどできたのに。後悔しても仕方ない。今対応に追われている。被害に遭ったのはおよそ3万冊(CDや児童書含む)。PCなどの機材もダメになった。人手は必要かと心配してもらえるが、何の本がなくなったのか、使えなくなったのかがわからない。また、まだ利用できるものは別の場所に移してクリーニングする必要がある。簡単に捨てることはできない。そしてまた元に戻すために何を除籍したかチェックしていかなくてはならないが、データ以前に電力もない。そんな理由もありなかなか作業が進まない」

 

 

本を返しに来た大学生に聞く

その時図書館に本を返しに来た22歳の学生さんの声

「この後実家に帰るので先に本を返す予定だったが、この状況。(図書館の中は見たか?)いつもと全然違う光景。床も泥だらけで少し驚いた。(日常の変化は?)今避難所生活でなにもかもが違っている。日常のありがたみを感じる。(避難所の生活は?)食べ物はおにぎりが出たり、調理室が避難所にあるのでそこで他の人が調理してくれたり。ごはんはなんとかなっている。寝るところはみんなで雑魚寝状態。毛布は支給されてる。エアコンが強くて寒いからかもしれないが、眠りが浅い気がする。(避難し何日目か?)2日目くらい。この間救助された。(避難した時の状況は?)電気も水道もダメ。避難した方がいいとマンションの住民たちといっしょに。マンションの屋上から自衛隊のヘリコプターで。ヘリの風が強くて怖かった。隊員の対応がテキパキしていて助かった」

 

 

前半まとめより

荻上

「(図書館について)本のことがわかる人(専門家)がやらないといけないため除籍が進まない。また被害を受けた資料のなかには買い替えの効かない郷土資料(具体的にどの資料かはまだ不明)も含まれていることが確認されている。業務再開のめどが立たない状態」

防災無線でまちにひっきりなしに情報が発信されている。とにかく情報が欲しい。口コミで流れる情報に間違った情報が含まれる可能性もある。スマホも充電できない。情報を得る手段がなく混乱している。

 

 

15日現在の図書館の状況

日曜に引き続き、15日火曜日に再び図書館を取材。前回来館時に状況を写真つきでTwitterにアップ*2したら、図書館の(東日本大震災などの災害からの)支援活動などしている団体saveMLAK*3の方から「自分たちは災害に遭った図書館の支援をしているのだけど、ぜひそこの図書館とつながりたい」と連絡があった。saveMLAKの連絡先を伝える役割をしたとのことでした。館長不在のため係長に話を聞くと、状況はあまり変わってはいないが作業は進めているとのことでした。図書流通センター*4などの団体から支援の申し出、スタッフの派遣の話が出てきており、つながりはじめてはいるとのこと。図書館の被災と言えば本の寄贈をしたいという人がいると思うが、まだまだ先。現状を確認し、除籍、データの復旧などをしていかなくてはならない。やるべきことは山積しています。

 

 

個人的な感想

「図書館と災害」というテーマになるといつも思い出し、そしていつも口にしていることがあります。数年前、台風による集中豪雨と河川の氾濫から、町がめちゃくちゃになってしまったエリアがありました。その地域にある学校は河川の増水で2メートル近い高さまで浸水。長期に亘って休校をしていました。その学校に勤務する学校司書が知人だったため、メールしてみると「図書館は2階だったから助かりました」との返事。ですが「よかったよかった」とはとても思えません。学び舎の殆どが浸水してしまっては学校は機能しません。その上、地域では断水・停電する家、行方不明者・精神的なダメージを受けた人たちがたくさん。自分でもその町を訪れましたが、ありきたりな言葉ではあるものの、自然の恐ろしさを感じずにはいられませんでした。某図書館協会の「被災を受けた図書館一覧」情報に学校図書館なんて載るわけもなく(実際、直接被害は受けていなかったわけですが)、もしそうなっても情報が上がってこない状況になったらと考えるとぞっとしたものです。

セッションでは豪雨などの災害から身を守る方法などの放送を幾度となくされていますが、(恐らくは)成り行きとは言え、その中で図書館が取り上げられる日が来るとは思っていなかったので新鮮でした。もちろん図書館に限らず、被災地の情報発信を積極的に行う荻上さんの姿勢を素晴らしいと思いました。情報を扱うことを仕事にしている者として、見習いたいと思います。

 

 

 

関係サイト・記事

www.tbsradio.jp

saveMLAK

【関東・東北豪雨】荻上チキ氏、常総市立図書館の惨状を伝える - Togetterまとめ

図書館の約3万冊が浸水被害 茨城・常総 NHKニュース

【茨城新聞】書籍、泥水に漬かる 常総市立図書館 再開のめど立たず

*1:主に図書館の本を整理するために使う。参考にブックトラック - Google 検索

*2:【関東・東北豪雨】荻上チキ氏、常総市立図書館の惨状を伝える - Togetterまとめ

*3:セーブムラック。saveM=Museum、L=Library、A=Archive、K=Kominkan)のため、正しくは図書館をはじめとした文化施設の支援活動。くわしくはこちらをどうぞ

*4:図書館流通センターか。株式会社図書館流通センター(TRC) 

加納朋子『トオリヌケ キンシ』

 

トオリヌケ キンシ

トオリヌケ キンシ

 

もう何年も読んでいなかった加納朋子さんの本。加納さんの作品はほとんど全部ハッピーエンド。読み終えるとほぼ確実に幸せになれるので、それらを愛する人がたくさんいることもわかる気がします。

と言ってもずいぶん前の話。久しぶりだし、いろいろ違って見えるのだろうなと思っていましたが、ハッピーエンドの確約*1は相変わらずでした。ですが、大きく違うのはそのテーマ性。

加納さんと言えば「日常の謎」系の推理小説で知られていますが、今回は各作品のキャラクターの性格・事情などにかなり強く焦点が当てられていて、ミステリというカテゴリーに入るかどうかという問いが瑣末なものに思えてきます。著者は大病を患って闘病をされていたとのことなので、伝えたいものが変わったり、増えたりされたのでしょう。

 

「世の中にはいろいろな人がいる。それを知ってもらいたい」

 

読みながらそのようなメッセージを受け取った気がしています。

 

*1:もちろんハッピーエンドをどう取るかはその人次第です。

瀧羽麻子『うさぎパン』

「パン」がキーワードになってくるのはもちろん分かっていたのですが、「うさぎパン」とは一体……。

うさぎパン (幻冬舎文庫)

うさぎパン (幻冬舎文庫)

 

 「左京区シリーズ」と一緒の感覚で読んでいたらまさかの人物登場でびっくり。ですがデビュー作の今作も同じように愛くるしいストーリーでした。短めで、かわいいタイトルに表紙。取っつきやすいし、ケータイ小説という名の恋愛小説好きの子たち、ぜひ瀧羽さん読んでみて!(司書の叫び)

 

おまけ短編「はちみつ」も「うさぎパン」のスピンアウト作品で楽しませてくれます。本編「うさぎパン」でパン屋巡りをする主人公優子とボーイフレンド富田くん。食べ物の描写で埋め尽くされる「はちみつ」。タイトルもそうですが、全編通してキーとなる食べ物たち。「七夕通り」がファッションなら「うさぎパン」は食べ物。おそらくどちらも著者のこだわりのあるもので、それらが作品を通して垣間見えることは、なんだか少し面白いですよね。今後も瀧羽さんの作品を読みたいです。

ハンク―ちょっと特別なボクの日常―第3話感想

 (前回記事は↓)

caliculus.hatenablog.com

 

ハンクの放送予定分はついにすべて終わってしまいました。多忙もありましたが、更新が滞っていて申し訳ありません。ゆっくりですが、私も録画を見ながら更新していこうと思います。今回は第3話。

 

ディベート大会に参加

毎年妹のエミリーと父スタンレーが出場し優勝しているディベート大会。今年はハンクも出場することになってしまいます。行動派のハンクも今回ばかりはプレッシャーに押し潰されそうになっています。ハンクとスタンレー、エミリーと母ローザの組み合わせで出場することになりますが、エミリーとスタンレーのやる気はちょっと空回り気味。

 

挑戦する意味は

今回ハンクがディベートに参加することになった理由は、ハンクにも大会に参加して家族同士交流して欲しいというローザの提案からでした。一方ライバルに負けたくないと父親はとことん勝負に拘ります。父親の作った情報カードの暗記がなかながうまくいかないハンク。「無理だよ」というハンクに対し「やれば絶対できる」と譲らない父。

 

始まった大会

紆余曲折ありましたが、ついに始まったディベート大会。ずるい手にもめげず勝ち進んでいくハンクたち。ハンクを救ったのは父親の作ったカード。前は文字がずらずらと覚えにくかったそれも、改良版では絵付きでとても記憶しやすいものに。

 

 行動派ハンク、さすがの大活躍

優等生エミリーももちろんですが、ハンクも絶対ディベート向いてますよね。私も大学時代ディベートは経験しましたが、あまり得意ではありませんでした。ですが攻め方はチームや個人の特性に合わせてよいし、理論武装は苦手でも抜け道はあるものです。今回も競争やチームワークなど、見どころがたくさんでした。

 

 

  • 資料紹介
多様性と出会う学校図書館 ―一人ひとりの自立を支える合理的配慮へのアプローチ―

多様性と出会う学校図書館 ―一人ひとりの自立を支える合理的配慮へのアプローチ―

 

 前回紹介した『一人ひとりの読書を支える学校図書館ー特別支援教育から見えてくるニーズとサポート』の続編が登場。P.26-からの「一人ひとりの特性とニーズを知るために」ではディスレクシアであることを公言している映画監督スティーブン・スピルバーグのエピソードも紹介されています。

有川浩『レインツリーの国』

 今日はこちら。

レインツリーの国

レインツリーの国

 

 映画化が決まり、盛り上がっている有川浩の『レインツリーの国』です。

誰かに「若い子向けの恋愛小説を探している」と言ったら、この本を教えてもらいました(誰だったか記憶がないのです。すみません……)。

頁数はおよそ200で、長編小説に初挑戦する子にいいですね。

 

内容について何かを書くと、ほぼネタバレになってしまうので詳しくは書きません。ですがこんな難しいテーマであっても臆さず書かれていることに(僭越ながら)感心しました。有川さんは自衛隊や図書隊、県庁の職員と、いろいろな立場の人の本を書かれていますが、おそらくどの作品も熱心にリサーチされていることと思います。その裏打ちがこれらの作品を生み出しているのでしょう。人気も頷ける話です。

キャラクターの細かな設定もさることながら、本当に器用な作家さんだなと思いました。とても面白かったです。

 

 

さて、映画化の件ですが。

raintree-movie.jp

2015年11月21日(土)ロードショーです。伸行役なら玉森くんでなく関西弁堪能な関ジャニのメンバーに。この作品も90万部近く売れているなんて!すご過ぎますね。予告編動画も見られるようになっていますので興味のある方はどうぞ。

それにしても映画も『フェアリーゲーム』のまま行くとは。ストーリーとも絡んできますし、当然と言えば当然かな?

 

 

 

 

バリバラ夏休みSP―Change! School Lifeプロジェクト―後編感想

 前回の記事はこちら

caliculus.hatenablog.com

 

www.nhk.or.jp

Eテレのバリバラで特集された「ハンク」のコラボ企画。ずいぶん遅れてしまいましたが、今回は後編の紹介になります。*1

 

 

ハンクの番組からクイズ

第2話からクイズが出題。たった1問でしたが、番組の紹介としてはいいかも。

 

 

「LDをわかってYO!」プロジェクト

前回のおさらいから、自閉症のラッパーGOMESSさんが登場。*2GOMESSさんのアドバイスの元、プレゼン(伝えたいこと)を整理していきます。嫌だった具体的なエピソード(「(文字を書くことを)お前はやらんでいい。みんなの足をひっぱるだけや」、etc)や一番伝えたいことなどを詩に。つらい作業であることが見ていてこちらにも伝わってきます。

 

「怠けているわけではなくてできないんです。できないものは頑張ってもできないんです。もっと頑張れって、どこまで頑張れば良いの?」(番組中のまっちゃんの言葉)

 

 

全国の学校の先生、生徒、関係者へ向けて

「できないならやらなくてもいい」とは言わないでほしい

できる方法を私たちと一緒に考えてほしい

 

ふたりの言葉がグサリ。誰もが関わっていくべき問題ではあるのですが、学校の教職員のひとりとなった今、その言葉は特に重い……。

 

 

総括

ディスレクシアについてわかってもらう番組としてはとてもよかったのではと思います。ただひとつ気になったのは、ハンクでは「ディスレクシア」と言われる読み書き障害が、バリバラでは「LD(学習障害)」で統一されていたこと。どちらも間違いではないですが、解説が入らないと初めて聞く人には違いがわからないのではないでしょうか。特にディスレクシアは未だ聞きなれない人が多いでしょうし。

何より自分自身考えずにはいられない内容でした。バリバラの企画は終わりますが、まだまだハンクは続きます。私も今後きちんと最後まで見て、自分なりに考えてみたいと思っています。

 

 

*1:番組の半分にあたるトラブル☆バイバイプロジェクトは記事の長さの都合、今回も割愛させていただきました。申し訳ありません。

*2:GOMESSさんの「人間失格」。自閉症の生きづらさなどをラップで表現されています。

www.youtube.com

瀧羽麻子『左京区七夕通東入ル』

合宿から帰ってからちょっと疲れ気味。暑い館内にいたせいか熱射病かもしれません。みなさんもご注意ください。

 

さて、今回はひょんなことから知った瀧羽麻子さんの本。

左京区七夕通東入ル

左京区七夕通東入ル

 

 生徒に薦められる恋愛小説を、なんて言っていながら今回は自分がハマっていましたね。文庫の裏表紙のあらすじにある通り、とにかくキュート。主人公の花ももちろんかわいいですが、何より作品全体に広がる愛らしさが読み手を癒してくれます。

 

舞台は京都で、主要キャラクターの殆どが大学生。著者が京大卒ということからなんとなく予想はついていましたが、舞台のモデルも京大です。私も何度か行ったことがあるので、読んでいて「あー、あそこね」なんて一人で頷いていました。

不思議な魅力の持ち主「たっくん」に惹かれていく花の心の動きももちろん、登場する愛すべき「冴えない理系3人組」も読んでいて楽しいです。そして何より京都の街がいきいきと描かれていることが大きな魅力です。舞台の描き方がいいと、自分もその小説の世界に入っていきたくなるものですから。著者の瀧羽さん自身、京都にとても思入れがあるのでは、と読んでいて感じました。

 

実はこの作品すでに続編が出ており、第3弾も現在連載中だそうです。まだまだ楽しめる「左京区」シリーズに注目です。